伊藤透のブログ

世界を走る選手のトレーニング

2020.3.10

先日、MATRIXの吉田隼人選手から”とあるデータ“を提供していただいたのですが、とても興味深かったので仕事の優先順位を変更し、当ブログを書きます。

 

え、いきなり吉田隼人選手が出てきているけど、どんな関係が?“と思う人も多いと思いますので、簡単に説明させていただきますと、彼が2018・2019年シーズンの2年間、NIPPOで走る前にMATRIXに所属していた際、パワートレーニングのコーチングをさせていただいたという経緯があります。

 

さて、今回書くブログがどんな内容なのかと言いますと”ツール・ド・フランスで総合3位になった選手(以下 : M選手)のトレーニング方法“というものです。全ては出せませんが、その一部がどんなものだったのかを、さっそく観てみましょう。

 

世界のトップを走った選手の知識と経験

 

先日、MATRIXの選手たちは”鹿児島合宿”をしていたようです。2020年3月20日-22日の3日間、ツール・ド・栃木が開催されるようですが、そこに向けて最終調整を行なっていると聞きましたが、ここで問題です。

 

“レース前、どれくらいのトレーニングを行うでしょうか?”

いきなり言われても、よくわからないですよね。

 

答えは”NPでいうと、体重の4倍になるレベルで6時間弱ほど乗り込む”みたいです。まあ普通、レース前では考えられないですよね。

 

トレーニング方法としては、フレッシュな状態でインターバルを行うとか、LSDのよるに距離や時間を稼いで乗るとかそういうものではなく、多少疲労している状態から目標に対して適切なインターバルを行うというイメージになります。例 : TSSが200を超えた状態から30分300w、TSSが300近くになった状態から2分走、とかそんな感じです。

 

一般のサイクリストがトレーニングを行う場合、初めからフレッシュな状態で行うインターバルなどは、MMPを向上させる上で必要になってきます。しかし、ある一定のフィットネスレベルになってくると”レースが活性化する後半に向けて、動けるような体を作る”というテーマで体づくりを行うようです。※ちなみに、今回のデータとは違いますが、M選手は1日9時間もそんな感じでロードバイクに乗る日を設けているという話も聞きました。

 

今回の合宿では、上記のようなトレーニングの目的に合わせて、”オーバーリーチング“を行なっているのかなと思いますが、そのオーバーリーチングがオーバートレーニングにならないフィットネスの基礎基本が高すぎるだろうと考えています…CTLが200くらいあるんじゃないかと思うくらいのタフネスを兼ね備えていますね。笑

 

そんなM選手のフィットネスは”才能”と思われつつも、どうやら”練習の鬼”のようです。元からある才能を開花させるために、そして維持するためにはどんなことがあっても、自分が一度決定した練習は”妥協しない“というほど、努力で作り上げたカラダのようです。その姿は、私が選手としても素晴らしいなと思う吉田隼人選手が“選手として尊敬する””もっと早く会いたかった”と豪語するほどなので、本当に凄い人なのだと思います。

 

さて、こういうことを書くと、それを真似して”俺もTSS200を超えてからインターバルをしよう!“と思う人が出てくるかもしれませんが、”絶対に真似しないようにしてほしいなぁ“と思います。絶対に体調が崩れます。笑

 

私が発信しているこういう情報も、きっと誰かの役に立っているのだと信じたいところですが、SNSを通じで簡単に得られる情報を鵜呑みにしていきなりそれをやりはじめるという人も多少いると感じています(プロ・トップアマ選手の発信する情報に合わせて)。実はそれをしてもあんまり意味がないよ、という情報が98%くらいです。

 

“もっと強くなりたい””もっと速くなりたい”と思う方がこちらのブログにたどり着いて読んでくださることが多いと思いますが、どうすればM選手や吉田隼人選手のようになれるのかのプロセスを伝えていきます。

 

本質を観ること

ロード界の話を一度、置いておきます。

 

東京オリンピックに向けて、自転車競技連盟のトラック種目が、優秀な成績を納めていますね。先日の世界選手権で言えば、男子ケイリンで脇本選手が2位、女子オムニアムで梶原選手が1位という好成績を残していましたね。

 

今までの彼らを追っていくと、この数年間の取り組みは、とても緻密に計算されたプログラムを、順当にクリアしていったのだなと考えられます。もちろん、悔過を出した選手も凄いと多くの人は思いますが、個人的には、そこまで日本人選手をリードしたコーチの頭脳がとんでもなく凄い、と感じています。

 

例えば、深谷選手が200mFTTで9秒609という日本新記録を更新しました。その結果は素晴らしいと思いますが、皆さんは何に注目しますか?私なら、そのタイムを叩き出すためには、何を考えて取り組んだのかが気になります。(※戦略を除いたフィットネスの話)

 

“目標とした数値(タイム)から考えられるギア比とケイデンス

↓そのために 

自身が最もトルクをかけることができるケイデンスを計算

↓そのために

そのギア比を踏む(回す)ことができるパワーを計算

↓そのために

そのパワーを生み出すために必要な筋力を計算

↓そのために

その筋力を生み出すために必要なストレングストレーニングとその段階に応じて必要とされるバイクトレーニングを作成”

という流れを数年単位で考えてペリオダイゼーションを作成したのだと思うと、一体どんな頭脳と経験を兼ね備えているんだろうなぁと思い、興味が湧いてきます。

 

 

ロードの話に戻ります。

 

例えば、UCIのレースを観て、選手がゴール前で○○ワットを出して勝った、という情報が目につく人が多いでしょう。ただ、考えてみてください。

何時間(何TSS)も蓄積された疲労の中から”それを絞り出すためにはどうしたらいいでしょうか”。また、そこまでにアタックなどがあったとしても、”疲労がたまらない体をつくりあげるためにはどうしたらいいでしょうか”。

 

トレーニングというのは、”こうなりたい自分”あるいは”こうならないといけない”という目標に対して因数分解をしつつ、割り出された解に対し、必要な情報から考察された物事をアプローチして初めて結果が出てきます。ここでは高いレースレベルの話になっていますが、ブルベやロングライドなど、レースレベル関係なく、皆さんはそれができていますか?

 

一度、自分のトレーニングがどのように行われていたのかを確認してみるといいと思います。もし”確認できない場合”は、厳しいことをいうようですが、今まで情報に踊らされてただ無計画に動いてしまっていた可能性が高いので、改めてトレーニングについて考え直した方がいいでしょう。

 

少し前にSNSで”300wを超える状態で1時間走る”ということをやっている人が何人かいると聞きました。そうしたトレーニングも、ヒルクライムならいいかもしれませんが、”ロードレースを勝ちたい”と考えた時にM選手や吉田隼人選手のように”TSBが-50を超えた日でもTSS200を超えてから300wで30分〜1時間漕ぎ続ける+その流れからフレッシュな時と変わらない1分全力走ができる”でしょうか?

 

まとめると、TSS200を超えてからも、フレッシュな時と同じようなMMPが出るようになるためには、どうしたらいいでしょうか?また、TSSが200となっていても疲労しないための体づくりをするためには、どうしたらいいでしょうか?

 

それまでのノウハウはブログではお伝えしませんが、こうした”考え方”が、誰かの力になればなと思います。※上を目指す方で、こうならなければと焦る方も多いかもしれませんが、こればかりは地道にやるしかありません。

 

世界の情報と日本の情報

様々なトレーニング理論がフィットネスデータがSNSを中心に流れてきていますが、”本物の正しい情報とはなんでしょうか?

 

少し前にイギリスでナショナルチームに携わっているコーチとお話をした時のトレーニング方法や、昨年の世界選手権TTで優勝した選手のコーチが提供するトレーニング方法は、今日本国内でトレーニング情報を発信している選手やコーチの実施しているプログラムとは全く違うものでした。詳しくはこの場でお伝えできませんが、体重の何倍、FTPの何%というメニューの作り方ではないということはお伝えしておきます。※正しい正しくないという話ではない。

 

世界は常に”最新ではなく最先端“を行ってきます。勝手に誰かが都合よく作り上げたそれっぽい理論(最新)ではなく、科学的根拠に裏付けられた最新情報(最先端)が、そこにはあります。ただ、面には出ません。私自身がいつもお世話になっているPudmedのような世界的データベースで調べても、悔しいことに出てきません。だからこそ、もっと世界に足を運び、様々な情報を手に入れてくる必要があるのだろうなと思います。時間とお金をかけてでも。※今年はイギリス、オランダ、オーストラリアにでも行こうかなと考えてます。

 

常に様々な方法でトレーニングの情報を仕入れて精査しながらプログラムを考えていますが、学べば学ぶほど答えがわからなくなり、一概に”これが正しい!”という発信ができません。1ヶ月に100本以上のセッション、前職から数えればプロからアマチュア、一般のフィットネス愛好家を含めて3000名を超える人を指導している経験から言えば、”人の体の反応は、年齢や性別や環境などによって違う“ので、日々試行錯誤しながら、今も様々な方の指導をさせていただいております。

 

“これが正しい”と発言しているトレーニング情報に関しては、一度疑問を持って見る癖をつけたほうがいいと思いますい、もし本当にトレーニングに関する情報を知りたいなら、責任を持って様々なプロにお願いするか、自身の知識を高めようにしましょう(ネットではなく、ちゃんとした書物から基礎基本から学びましょう)。

 

吉田隼人選手の活躍

 

さて、今回データを提供いただいた吉田隼人選手ですが、現役選手でありながら、ヨーロッパで得た経験に基づいて開発した “BOOST SHOT”を販売し始めました。カフェインの含有量が、レッドブルの2倍、眠眠打破の強化版である劇民打破よりも30mgも多く含まれており、そのカフェイン含有量は国内のカフェインドリンクの中でも最も多いのではないだろうか?と考えられるほど。

最近は”BOOST SHOTの人”みたいになってますが、このように、まだまだ現役で走る選手なので、是非とも皆さん、応援してくださいね。また、会場で見かけたらBOOST SHOTを片手に写真撮影を依頼してみましょう!

 

吉田選手、データ提供ありがとうございました。